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モスバーガー 高齢店員「モスジーバー」積極採用して好影響

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東京・五反田。午後9時を過ぎた頃、勤めを終えたサラリーマンや若者で溢れるファストフード店「モスバーガー」の店内の光景はちょっと変わっている。接客係も厨房係も、ファストフード店にしては年齢層が高い。初老の従業員たちが緑色の制服に身を包み、忙しそうに働いているのである。

「いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか」

孫のような年齢の客に物腰柔らかな口調で応対する。モスバーガー五反田東口店では、在籍するアルバイトの2割、約10人が60歳以上だ。彼らは、親しみを込めて「モスジーバー」と呼ばれる。比較的時間の余裕があるため、早朝・深夜にシフトを組むケースが多いという。
(2014.11.02 NEWSポストセブン

適材適所とは人材活用の基本中の基本だが、こと再雇用された中高齢者に限っては、なかなか本人も周囲も納得できる正解が見えないのが現状だ。
中高齢者ならではの経験を活かす、といっても、再雇用した高齢者の保有するスキル、ノウハウの多くは、実は時代遅れであることが多い。だから再就職はしたけれど、力足りず、職場のお荷物となり、本人も肩身の狭い思いをする、といった場面をしばしば見かける。

もちろん中高齢者の力を生かせる場もないとはいえない。思いつくのが一般的な事務処理や、長年にわたって変化の少ない各々の業界特有の事情に基づいた流通・小売業などだろう。しかしそうした一見普遍的と思える仕事も、実はここ最近の相次ぐイノベーションやIT導入によって、ずいぶんと様変わりしている。

では、中高齢者が自分の持ち味を発揮していきいきと働ける場はどこにあるのか? そのヒントとなりそうなのが、モスバーガーに勤務している中高齢者の店員、通称「モスジーバー」、たちである。

若者向けの、喧騒あふるる夜の居酒屋で高齢者が働くのは、肉体的にも精神的も少々敷居が高い。でもハンバーガーショップの早朝や深夜帯なら、高齢者ならではのゆったりとした佇まいが独特の空気を醸し出し、非日常の時間を演出してくれそうだ。

そういえば以前、マクドナルが店舗で中高齢者を雇用したところ、その細やかな心遣いが若者に好評で話題になったことがあった(急の雨でお店に駆け込んだ若い客に、「これで体を拭くように」と2、3本のおしぼりを渡してあげた等)。また最近では立食で高級料理を安価に提供する「俺のイタリアン」などで評判の「俺の株式会社」が、高齢者雇用の受け皿としてカウンター式の焼鳥屋展開を始めたそうだ。カウンター式の焼鳥屋なら厨房を走り回ったりフロアを行き来することはないので、調理や接客の肉体的負担が少なく、中高齢者でも安心して働けるからだ

長年にわたって培われたノウハウやスキルがあまり役に立たない。とはいえ、中高齢者が新しい環境に馴染み、新しいスキルを習得するのはそう簡単ではない。でも能力ではなく、人間性なら勝負できるのかもしれない。そう着目したモスバーガーは卓見だったといえるだろう。

もちろん中高齢者のすべてが全員親しみやすく物腰柔らか、というわけでもない。ここでもまた適材適所ではあるのだが、本来なら接客サービス業に必要な資質をすでに体得している割合は、中高齢者には比較的高いことは容易に想像がつく。

若者に好評なのは大変よいことだし、消費者(お客)もまた高齢化が進む日本では、中高齢者の特徴である親しみやすさ、物腰の柔らかさなどを生かす雇用の場は、今後ますます増えていくのではないか。その意味でも、モスバーガーの試みは、これからの時代につながる意欲的で示唆に富むチヤレンジといえそうだ。

著者情報:
井手 和明

1954年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。雑誌編集者を経て、フリーランスの編集ライターに。以降、紙、デジタルにわたって、IT、Web、経営・経済・歴史、社会学、心理学など多方面にわたるコンテンツのプランニング・制作・編集ライティングに携わる。ネットショッピング、ウェブマーケティング、ITトレンド、歴史、心理学、健康などに関する多くの著作あり。

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