Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

ソフトバンクのスプリント買収が完了、ベライゾン、AT&Tの牙城を崩せるか?

ソフトバンクのスプリント買収が完了しましたね。CNETでは以下のように報道。

ソフトバンクは216億ドルでのSprint Nextel買収を正式に完了し、SprintをめぐるDish Networkとの買収合戦によって長引いていた買収案件をようやく成立させた。Sprintが米国時間7月10日に発表した。
ソフトバンクは1株当たり7.65ドル(約166億ドル)を現金で支払い、新会社の78%の株式を取得する。Sprintの株主が6月末に圧倒的多数で承認した本買収案件は先週、米連邦通信委員会(FCC)の全会一致の承認を得た。
Dan Hesse氏は今後もSprintの最高経営責任者(CEO)に留まり、ソフトバンクの孫正義氏は新会社の取締役会長に就任する予定だ。
Sprintは201億ドルでの買収提案をめぐって、2012年10月からソフトバンクと交渉を重ねていた。Dishが255億ドルの買収額を提示して 人々を驚かせた後、ソフトバンクは216億ドルの買収額を提示してこれに対抗し、同社の提案の方が株主に多くの現金が渡ると主張した。

米国市場における移動体通信ビジネスで記憶に残るのが、2000年前後のNTTドコモによるAT&Tワイヤレスの資本参加です。
約4年間16%出資の筆頭株主として約2兆円を出資、結局最後はシンギュラーに7000億円前後で売却し、1兆円以上の大きな赤字プロジェクトになったわけで、ドコモ及びNTTの首脳陣には海外事業を考えるときに真っ先に思い起こす大いなる懸念になっている事件です。
ドコモはその後もインドのタタへの出資で2000億円程度を投じていますが、この事業も負債が5000億円に迫りうまくいっていません。

さて、今回のソフトバンクのスプリント買収とドコモの海外ビジネスの最大の違いは、ソフトバンクがスプリントの78%の株式を取得して子会社としたのに対して、ドコモは筆頭株主ながら子会社化しなかった(できなかった)ことです。
今後はソフトバンクから経営陣が送り込まれて、ベライゾンやAT&T、メトロ、Tモバイル競争が始まります。まさに経営能力が試されるフェーズに突入するわけです。日本市場では「iPhoneだけ」の一本足打法でどうにかこうにかやってきたわけですが、ここではその戦略では勝てません。

米国市場は旧AT&Tの系列でその設備を引き継いだベライゾン・ワイヤレス(AT&Tから分離した地域電話会社ベライゾンとボーダフォンとのJV)、AT&Tワイヤレス(SBCがシンギュラー買収で実質的にAT&Tワイヤレスを子会社化した会社)の2強が圧倒的なポジションにあり、他社(スプリント、メトロ、Tモバイル)が追随できずにいます。

ソフトバンクはスプリント買収においては、少なくともボーダフォンの日本ビジネスを買収した時のように高値でつかまされてはいないことからも携帯ビジネスで多少熟練しつつあることが伺えます。日本でNTTドコモ(アメリカでいえばAT&Tの地盤を引き継ぐ2強ということですが)のシェアをどんどん奪った実績がありますので、米国通信市場を席巻し、第三勢力から主役の座に躍り出るような活躍を期待したいところです。

三上 俊輔

著者情報:
三上 俊輔

2006年、早稲田大学法学部(専攻労働法)を卒業後、独立系エグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社に入社。柔硬幅広い業界の部門長クラス以上の経営者獲得、スペシャリスト(エンジニア、会計士など)採用を実現。 2011年、サーチファーム・ジャパンより組織戦略及び技術コンサルティング事業を分社化し、ジーニアス設立、代表取締役就任。 理論と実践のギャップを埋め、健全なる雇用環境の発展に微力ながら貢献すべく、スカウトその他様々なプロジェクトを戦略的に遂行している。

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。