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【2014年3月期】人材業界決算発表にみる光と影

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人材業界の決算が大方出揃いました。
人材業界全体が成長する中、他社より目立って業績を伸ばした会社とその反対に減収減益の会社もあるようです。

去年の同時期にも決算表のまとめをしたので、今回は表のまとめだけでなく人材業界の動向についてレポートしてみようと思います。

今回の記事では、決算をまとめている際に気になった3社(リブセンス、ディップ、フルキャスト)について調べてみました。

3社を選んだ理由は、売上高、営業利益率、当期純利益の3つの変化率が業界全体の変化よりも著しかったからです。

1.リブセンス

リブセンスは前期と比べて売上高がプラス88%、営業利益がプラス40.2%、当期純利益がプラス64.7%と一見好調ですが、営業利益率が49.9%から37.2%に下がっています。

主力の求人情報メディア事業では
ジョブセンス: 2,253,147 千円(前年同期比87.9%増)
ジョブセンスリンク: 1,177,781 千円(前年同期比130.9%増)
ジョブセンス派遣: 206,888 千円(前年同期比8.1%増)
前年と比べるとジョブセンスリンクが最も伸びています。アルバイト紹介のジョブセンスでの成功モデルをより単価の高い転職のジョブセンスリンクへと展開しています。
ジョブセンスリンクが同社の他の媒体よりも伸びた背景として雇用環境が改善してきていることや派遣法の改正などで正社員雇用が進められていることがあると思います。

利益率の大幅な低下に関して、IRでは『サイト集客力の向上を目的とした積極的なWebプロモーション活動の実施による広告宣伝費の増加や、従業員数の増加に伴う人件費等の増加』が挙げられています。また不動産情報メディア事業でもPCサイト、スマートフォンサイトともに全面リニューアルしています。

なお、広告宣伝費は172百万円→1,002百万円、従業員数は92人→185人と明らかにコスト構造が変わっていることが分かります。求人媒体の生命線である集客やサイト運用に大きくコストアップが確認できました。

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(株式会社リブセンス 2013年12月期 決算説明会資料より引用)

2.ディップ

ディップの業績は前期と比べて売上高がプラス42.7%、営業利益がプラス591.1%、当期純利益がプラス1441%と飛躍しました。

メディア事業において売上高が 前年同期比38.0%増(107億27百万円)、セグメント利益は前年同期比30.7%増 (27億17百万円)となっています。
売上伸長については、景気が良くなり純粋に求人数が増えた(バイトル22,704件→54,858件 はたらこねっと12,988件→26,396件)という外部要因に対してTVCMによる積極的なプロモーション、スマートフォン向けの大幅な改善を行ったことで上手く需要を取り込めたことが要因だと考えます。

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(ディップ株式会社、2014年2月期 決算説明会資料より)

3.フルキャスト

3社目はフルキャストです。
前期決算期を変更、前期が15ヶ月の変則決算であったことを考慮しても、大幅な減収減益となりました。(売上高マイナス52.7%、営業利益マイナス81%、マイナス66.4%)

事業セグメント毎ではこのようになっています。
a) 短期業務支援事業
売上高は34,373百万円→15,665百万円
営業利益は2,300百万円→834百万円
b) 警備事業
売上高は2,524百万円→1,797百万円
営業利益は164百万円→101百万円

フルキャストのIRによると「短期人材紹介」において売上が伸びなかったことが業績悪化の要因とありますが、具体的には派遣法の改正で日雇派遣の原則禁止が規定され、業態を短期派遣事業から「アルバイト紹介」及び「アルバイト給与管理代行」へ移行していることを指しています。

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(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/kaisei/02.html)
フルキャストでは“労働者派遣法改正法に関するご案内”でこの件について言及しています。(http://www.fullcastholdings.co.jp/information/

派遣法改正の影響を最も大きく受けたのが、日々派遣、日々紹介を展開するフルキャストだったわけですが、売上が半分になってしまったことにはとても驚きました。

感想

まとめは以上ですが、初めて自分でやってみてとても勉強になることが多かったです。

IRに目を通す機会は何度もありましたが、今回のようにそれぞれの数字や説明が意味していることを他の情報と照らし合わせて解釈していくのは慣れておらず、苦労しました。
特に探すべき、拾うべき情報の検討に苦労したのでこれから養っていきたいです。

ただ色々と調べていくうちに単に数字を見ただけではわからないことが仮説ではあってもわかってくると達成感がありました。

また同じ人材業界でもビジネスモデルが違うことで、法の改正一つ取っても影響の仕方が全く違うのも印象的でした。

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菊池智博

著者情報:
菊池智博

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