2013/10/17
非正規雇用の契約期間が5年から10年に延長となるようです。
そもそもこのテーマは「国家戦略特区」に限定された規制緩和政策の中で議論されていました。
ニュースでは全国一律の規制を求める厚生労働省が難色を示していたことで、このような帰結となったということですが、色々と考えてしまいますね。
政府は、雇用分野の規制緩和の一環として、非正規労働者が同じ企業で5年を超えて働いた場合、希望すれば期限のない雇用契約に切り替えることを企業に義務づけた労働契約法について、非正規で雇用できる期間を10年まで更新できるよう改正を目指す方針を固めました。
私がこのニュースで感じたのは、「日本における雇用のコンセプトが変わる」ということです。
これまで日本では正社員で期限の定めのない雇用を前提としたシステムで運用されてきました。
良い悪いという評価は抜きにして、雇用契約は「契約」とはいうものの、実態的には定年退職まで「期間の定めのないもの」という理解が前提にあったと思います。
今回の法改正によって、10年間という長期の労働契約が可能となるために、古典的な「正社員」という存在がどんどん希薄になっていくこと想定されます。
さて、私が懸念しているのは、特に若年層の契約社員化が猛烈な勢いで進んでいくことです。
既に正社員の方の身分を契約社員に変更することは法的にも、道義的にも非常にハードルが高いことです。
しかしながら、新たに雇い入れる社員については、そのハードルは限りなく低く、入社条件として契約社員であることを明示すればそれで足ります。
既に若年層では顕在化していますが、新卒時に正社員として入社できずに、アルバイトや派遣、フリーターとしてキャリアをスタートされた層が再び正社員として雇用される可能性は低い状態です。
また、これまで日本の雇用慣習として、正社員は基幹業務を、契約社員は定型業務や補助業務を担当することが多く、契約社員の身分で中長期のキャリア形成につながるようなスキルや経験を身に着けることが非常に難しい状況は変わっていません。
もちろん、リクルートや電通など、予め3年間で独り立ちできるように仕組化された契約社員制度を長年運用している一部の企業や、人事制度上給料が合わないので特定部署の従業員を契約社員としている金融機関は除きます。
一方、企業経営者の目線で考えると、未熟な若者を正社員として採用して教育するよりも、即戦力性の高い中途社員に基幹業務を任せ、業務経験がなく給料の低い若者を補助的業務で使い、コストが高くなる前に交換していくようなモデルは、ビジネスモデルが一定水準以上で確立できている会社にとっては取組安いものだったりもします。
すべての企業がこのように若者を契約社員でしか雇用しないということはあり得ないのですが、確実に若年層の非正規社員比率は上がっています。
今回の法改正が更にそれを加速させていくような結果を生んでしまうと、若年層の非正規化が更に進み、スキル・経験を身につかないままで、且つ所得も低いままで30代を迎える方が大勢出てくることは、ボディーブローのように日本経済を痛めつけることに繋がらないか?と危惧しています。
また、一方で前回のブログでもふれたように高齢者の定年は60歳から65歳に延長となり、こちらは手厚い保護が行われています。
今回の法改正は必ずしも若年層をターゲットにしたものでは無いのでしょうが、確実に若年層にはその影響が出てくることが予想されます。
2つの世代間でここまで対応が異なるのも、何だか考え物だなと思ってしまうのです。
今後我々人材業界は、非正規雇用が主力になる労働市場の中で、どのように質の高い労働力を提供するのか?という課題に直面します。
特に若年層の紹介や派遣を主に行っている企業においては、「教育・人材開発」が重要な意味を持ちそうです。
単なるマッチングから、人材をトレーニングし付加価値を高めて提供することが不可欠の時代がすぐそこにやってきています。
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